質問「一眼レフでの動画撮影に、Zoomレンズを買おうと思います。ビデオカメラくらい広い焦点距離のレンズでオススメはありますか?」
一眼レフでの動画撮影では、レンズの交換をすることで映像表現の幅が広がりますよね。
単焦点のレンズを使えば、ボケ味のある映像が撮影できるし、広角レンズを使えば狭い場所でも広く撮影ができるので、一眼レフで撮影すると映画みたいな映像ができるのです。
でも、撮影の時にいちいちレンズを交換するのって面倒臭いですよね。僕もドキュメンタリーを中心に撮影してきたので、ビデオカメラのようにレンズを交換しなくても撮影ができることのメリットはすごく感じます。
一眼レフでの動画撮影で使える焦点距離の広いZoomレンズはないの?
焦点距離の広いZoomレンズがあるとどういうメリットがあるんでしょうか?
面倒なレンズ交換をしなくていい!
さっきも言いましたが、一眼レフでの撮影では、撮影中のレンズ交換が結構面倒くさいです。
ボケ味を出したいならば単焦点レンズ、狭い場所での撮影ならば広角レンズ、マクロレンズや望遠レンズと、撮影したい画角や状況によってレンズをどんどん交換する必要があります。
でも、焦点距離の広いZoomレンズがあれば、この面倒なレンズの交換の煩わしさから解放されます。
撮影中にレンズ交換をしなくていいとなると、持っていく荷物も軽くなるので、そういった負担も減りますね。
同じ場所からいろんな画角で撮影できる!
Zoomレンズであれば、全体像が入る広い画角から、手元などのアップの画角まで動かなくてもいろんな画角で撮影が可能になります。
ビデオカメラでの撮影であれば、そんなことは当たり前にできるんですが、一眼レフでの動画撮影では難しいことです。
いろんなバリエーションの映像を撮っておくことは、あとで編集する時に役に立つので重要な要素だと思います。
では、広い焦点距離のZoomレンズはどれがいいですか?
僕は、一眼レフでドキュメンタリーを撮ることを考えて、広い焦点距離を持つTamron 18-270mm F3.5-6.3を買ってみました。
どんなレンズなのか、このレンズの良いところと悪いところを考えてみます。
Tamron 18-270mm F3.5-6.3レンズの良いところは?
18-270mmの本当に幅広い守備範囲!
まず、一番広く撮れるのは18mmです。超広角とまではいきませんが、かなり狭い場所であっても撮影ができます。
標準レンズを持っていなくても、ASP-Cの標準である30mmでも撮影ができますし、望遠は270mmなので遠くのものであっても大きく撮影することができます。
この範囲で撮影をするのであれば、普通は3〜4本のレンズを絶えず交換しなければいけないのでものすごく便利だと思います。
値段が安い!
レンズを選ぶ時には、やはり値段も重要な要素ですよね。一眼レフの純正のレンズの中には、20万円を超えるものもたくさんあります。
個人的には、そういうレンズにはなかなか手が出せません。
それに比べて、このTamron 18ー270mm F3.5-6.3は、元々は8万6千円だったようですが、現在はAmazonでみたところるたったの3万2千円です。
レンズの中でも、かなり安いですよね。下の方にこのレンズのダメな点もたくさん書くのですが、工夫して使えば克服できるものばかりです。
18-270mmの幅広い焦点距離のレンズで、この値段であれば考えてもいいと思いますね。
手ブレ防止のモーターがついていて手ブレしない!
18mmとか広角で撮影をしているぶんには、そこまで手ブレは気にならないと思います。広角で撮ると手ブレの影響は少ないのです。
これが270mmとかで撮影をすると、手ブレが目立つ映像になってしまい、使えたものではありません。
Tamron 18-270mm F3.5-6.3には、PDZという超音波モーターがついていて、例えば270mmの望遠で撮影をしても手ブレが起こらないようになっています。
手ブレは一眼レフカメラにとって最大の敵なので、PDZはとても役に立ちます。
このレンズの「ダメなところ」ってないんですか?
一眼レフで動画撮影に使うレンズは、良いところもあればダメなところもあります。このレンズを実際に動画撮影用に使ってみて、ダメなところはなんでしょうか?
F値がZoomによって変動する!
ビデオカメラでの撮影に慣れている人には、F値がZoomによって変わると言われてもわからないかもしれません。
一眼レフ用のZoomレンズでは、F値が変わるものが多いです。例えばこのレンズのF値をみても、F3.5-6.3と書かれていますよね。
これは、使う焦点距離によってF値が3.5や、5.6、そして6.3に勝手に変動するということを意味します。
「F値が変わるとどうなるの?」って思いますよね。
F値が3.5から5.6に変わると画面が一段階暗くなります。それから、F6.3に変われば、もう一段階暗くなります。
Zoom inして行くと、F値が大きくなり、画面が暗くなります。
徐々に暗くなるのではなく、F値が変わる時にレンズから「カチッ」と音がして、その瞬間に一段階暗くなります。
このF値の変動は、動画撮影用にはあまり向いていないです。
自分自身の打開策は、2つあります。
一つは編集のときに明るさを変更すること、そしてもう一つは、撮影中にF値が変わった瞬間にISOを変えて明るさを調整することです。
はじめは、編集で変えていましたが、画質の悪さが気になったので、途中からISOを高めることにしています。
F値が一定のZoomレンズは値段がものすごく高いです。コストをかけずに、F値が変動するZoomレンズを使うならば工夫が必要になってきます。
手ブレ防止のPDZの音が結構気になる!
手ブレ防止に超音波モーターPDZが役に立つと、このレンズの良いところでも書きました。
ただ、良い部分もあるのですが、これによって引き起こされる問題点もあります。
それが撮影時に聞こえるモーター音です。
カメラの上にRode Videomic Proなどのマイクを乗せて、録音していると「カリカリカリ」というモーターの音が入ってしまいます。
ちょっとうるさい場所で撮影をしているならば環境音もあるのでそれほど気になりませんが、静かな場所で撮影をしていると、このモーター音は気になってきます。
打開策は、カメラとは離れた別のマイクで録音するか、ナレーションなどをかぶせて音を使わないことでしょうかね。
ここにも工夫は必要です。
写真用のレンズなので滑らかにズームはできない!
ビデオカメラであれば、電動で滑らかなズームができますよね。
「二人で話している場面で、ゆっくり片方の人の顔だけにカメラがズームして行く」なんてことが、ビデオカメラではできます。
このレンズはズームレンズですが、写真用なので滑らかなズームというものは、そもそも期待できません。
早くても、遅くても一定のスピードで、ズームするということはできないです。
このことって結構知らないんじゃないかなと思います。
ビデオカメラで当たり前にできることが、一眼レフでの動画撮影では当たり前ではないのです。
画角を変える時には、ゆっくりズームすることをあきらめましょう。
僕は、1秒未満で画角を変えることにしています。画角を変えたら、すぐにISOを変えます。編集で画角とISOを変えた数秒をカットしています。
まとめ
気がつけば、このレンズの良いところよりも、ダメなところの方が文章が長くなってしまいました。
一眼レフで動画撮影をする人は、そもそもこのレンズ交換で得られる、それぞれのレンズが表現する映像の美しさに心を惹かれて、撮影が面倒な一眼レフをわざわざ使っていると思います。
そう言っても、ビデオカメラみたく焦点距離が幅広いレンズを使わなければ、撮影できない時がありますよね。
そんな時にはこのレンズが役に立つと思います。ダメなところもあるのですが、どれも工夫すれば克服できるものばかりです。
値段も安いので、コストパフォーマンスを考えると相当良いレンズだと思います。